神道におけるお葬式「神葬祭」の流れやマナーについて

2020年6月22日 法事・法要
神道におけるお葬式「神葬祭」の流れやマナーについて

現在、日本で行われるお葬式の多くが仏式であるため、神道式の流れや作法・マナーについて、不安や疑問を感じる人は少なくありません。神式葬儀は仏式葬儀とは異なる点が多く、流れやマナーを事前におさえておかなければ、知らず知らずのうちにマナー違反となる可能性があります。

そこで、今回は神式と仏式との違いを中心に解説した上で、神式葬儀の流れや作法・マナーについて紹介します。神道式のお葬式に参列予定の人は、ぜひ参考にしてください。

1.神道におけるお葬式「神葬祭」について

神道におけるお葬式は「神葬祭」と呼ばれます。神葬祭は仏式葬儀とは異なり、亡くなった人を極楽浄土や天国に送るための儀式ではありません。神葬祭は、亡くなった人が家を守る神様となるように祈るための儀式です。

神道では、すべての人間は神の子であり、この世での役割を終えると神々の住む世界に帰って先祖の魂とともに子孫を見守るものと考えられています。そのため、神葬祭では別れを惜しむよりも、前向きな気持ちで故人が神となることを祈った方が、故人への手向けとなるでしょう。

1-1.仏教との違い

神仏習合という言葉があるように、日本の民族宗教である神道と仏教は互いに影響を受け合っている関係の深い宗教です。
しかし、神道と仏教にはさまざまな違いがあります。たとえば、仏教には仏陀や菩薩などの具体的な信仰対象があるのに対して、神道には特定の信仰対象がありません。代わりに神道の根底には、すべての物事に神が宿るというアニミズム思想があります。

また、仏教には「輪廻転生」と呼ばれる、亡くなった人はまた新しい命に生まれ変わるという死生観がある一方で、神道にはそのような死生観はありません。神道では、亡くなった人は氏神となり子孫を見守るという考え方があります。
このような死生観の違いが、神道式と仏式にさまざまな違いを生み出していると考えられます。

2.神葬祭の流れ

神葬祭の流れは、仏式の葬儀とは大きく異なります。仏式であれば、亡くなった日の翌日に通夜を、翌々日に葬儀・告別式を執り行うことが一般的です。しかし、神葬祭の場合は、逝去当日からさまざまな儀式が執り行われます。
以下は、一般的な神葬祭の流れを紹介したものです。神葬祭に参列する予定の人は、ぜひ参考にしてください。

■逝去当日

帰幽奉告(きゆうほうこく)
家で祭っている氏神に故人が亡くなったことを報告する。
その後、氏神を祭っている神棚に穢れが及ばないように扉を閉めて白い紙を貼り、神棚封じを行う。

枕直しの儀
ご遺体に白の小袖などを着せて、北枕にして白地の布団に寝かせる。
枕元には白無地の逆さ屏風を立て、ご遺体の前に枕飾りを設ける。

納棺の儀
ご遺体を棺に納める。
納棺後、出棺されるまで、喪主と遺族によって柩前日供の儀が行われる。

■神葬祭1日目

通夜祭
通夜祭は仏式のお葬式における通夜に相当する儀式。
参列者全員が手水の儀を行って身を清めてから開催される。
通夜祭では、斎主である神職による祭詞奏上、参列者による玉串奉奠が行われる。
玉串奉奠は神職・喪主・遺族・親族・その他の参列者という順番で執り行われることが多い。

遷霊祭(せんれいさい)
遷霊祭は故人の御霊をご遺体から霊璽に移す儀式。
暗闇の中で神職が遷霊の詞を奏上し、御霊移しの儀を執り行う。
遷霊祭を行うことで、故人は祖先とともに家を守る氏神となる。

■神葬祭2日目

葬場祭
葬場祭は仏式のお葬式における葬儀・告別式にあたる儀式。
通夜祭と同様、参列者は開催前に手水の儀を行う。
葬場祭では、修祓の儀や奉幣・献饌の儀、誄詞奏上の後に、弔辞の奉呈などが執り行われるという流れが一般的。
最後に玉串奉奠を行う。

火葬祭
火葬祭とは、火葬場でご遺体を火葬する前に執り行われる儀式。
祭詞奏上と玉串奉奠を行った後、棺を火葬炉に納める。

埋葬祭
埋葬祭とは、遺骨を埋葬するために執り行う儀式。
墓地に遺骨を納めて祭壇を作り、神饌などを供える。
その後、祭詞奏上と玉串奉奠が執り行われる。

帰家祭
埋葬祭を終えて喪主の家に着いた後、家に入る前に手水や塩で身を清める帰家修祓の儀を行う。
塩は胸・背中・足元の3ヶ所に振りかける。
参列者全員が家の中に入った後、祭詞奏上と玉串奉奠が行われ、一同拝礼によって葬儀が締めくくられる。
なお、帰家祭の後には、直会の儀という仏式における精進落としのような宴が催される。

3.神葬祭で覚えておくべき玉串奉奠(たまぐしほうてん)の作法

玉串奉奠は玉串拝礼とも呼ばれる、仏式の葬儀における焼香にあたる儀式です。榊の枝に紙垂という紙が下げられている玉串を祭壇に捧げ、故人への手向けとします。一般的な玉串奉奠の作法は、以下のとおりです。

【玉串奉奠の流れ】

  • ①祭壇の前に進み出る。
  • ②遺族に一礼する。
  • ③神職の前に進み出て、一礼する。
  • ④神職から玉串を両手で受け取る。右手の甲を上に向けて根元の部分を、左手の甲を下に向けて枝の先端部分をやさしく包み込むように持つ。
  • ⑤玉串を胸の高さに捧げ持ち、玉串を載せる台である玉串案の前まで進み出る。
  • ⑥祭壇に向けて一礼する。
  • ⑦玉串を根元が地面、枝の先端が天を向くように持ち直す。左手は上に、右手は下となるように、手首を回して玉串の向きを変える。
  • ⑧この状態で祭壇に祈念する。
  • ⑨玉串の根本を祭壇に、枝の先端を自分に向くように寝かせて持ち直す。
  • ⑩玉串の中程を下から両手で支えて、玉串案に供える。
  • ⑪祭壇に向けて二礼する。
  • ⑫音を立てないように拍手を2回打つ。
  • ⑬祭壇に向けて一礼する。
  • ⑭祭壇の方を向いたまま2、3歩下がる。
  • ⑮遺族に一礼して、自席に戻る。

なお、神道宗派によっては手順や作法が異なる場合があります。参列を予定している葬儀の宗派を確認して、適切な作法で玉串奉奠を行ってください。

4.神葬祭で気をつけるべき服装などのマナー

神葬祭には仏式の葬儀とは異なるマナーが、いくつかあります。神道も仏教も大きな違いは無いものと考えていると、思わぬところでマナー違反の行動を取ってしまうことがあるため、注意が必要です。

ここでは、神葬祭で気をつけるべき服装・持ち物・言葉遣いの基本的なマナーを紹介します。神葬祭に参列する前に必ずチェックしておきましょう。

4-1.服装・持ち物

神葬祭に参列する際の服装は、仏式の葬儀と同じで問題ありません。男性は喪服を、女性は黒無地のスーツなどを着用しましょう。靴や靴下、バッグなどの小物も、光沢の無い黒色のものを選ぶように心がけてください。
なお、仏式の葬儀と同様で、華やかなアクセサリーや殺生をイメージさせる革製のアイテムは身につけないように注意しましょう。

ちなみに、数珠は仏教の教えを守る僧侶がお経を読む際に用いる仏具であるため、神葬祭にはふさわしくありません。神葬祭に参列する際は、数珠を持ち込まないように気をつけましょう。

4-2.言葉遣い

神葬祭に参列する際には、遺族に対して「お悔やみ申し上げます」や「ご冥福をお祈りします」などの挨拶を行わないように注意してください。

神葬祭は故人が家を守る神となることを祈る儀式であり、故人の死を悼むための儀式ではありません。また、「冥福」や「成仏」などの仏教用語は使わない方が無難です。神葬祭で遺族に言葉をかける際には、「御霊のご平安をお祈りします」という言い回しを使いましょう。

神葬祭のマナーを守るためには、神道の考え方や神葬祭の目的、意味を十分に理解することが大切です。神葬祭の意義を理解し、神葬祭にふさわしい立ち居振る舞いとなるように心がけましょう。

まとめ

神道式のお葬式である神葬祭に参列する場合は、仏式で行われる葬儀との違いを理解することが大切です。神式葬儀と仏式葬儀の違いを理解していなければ、知らず知らずのうちにマナー違反となる行動を取ってしまう可能性があります。

特に、神葬祭の基本的な流れや、服装・言葉遣いなどの特徴的なマナーは、事前に確認すべき事柄です。

今回、紹介した神葬祭の流れや作法・マナーをマスターして、故人の平安を心から祈りましょう。