身内が死亡した際に行うべき手続きについて
長く時間をともにしてきた家族との永遠の別れは、人生の中でも最も辛い出来事の1つです。遺された家族は、故人に思いを馳せる間もなく、死亡に関する手続きを進めなければならなりません。身内の誰かが亡くなったときに、遺族はどのような手続きを行う必要があるのでしょうか。
この記事では、身内の誰かが死亡したときに必要な手続きについて、死亡直後に行うべきものと可能な限り早く行うべきものに分けて解説します。葬儀の手続きのタイミングもあわせて確認し、悔いの残らないお別れをしましょう。
1.身内の誰かが死亡した際すぐに必要な手続き
身内など、近しい関係にある誰かが亡くなった際には、様々な手続きを遺された家族が行わなければなりません。死亡後に行う必要がある手続きには、死亡後すぐに行うべきものと、死亡後にある程度の猶予があるものがあります。
ここでは、死亡後に直ちに行うべき手続きについて解説します。深い悲しみにある中でも、落ち着いて手続きができるよう、手続きの内容とポイントをしっかり押さえておきましょう。
1-1.死亡診断書の作成依頼・受取
身内の誰かが亡くなったら、まずは医師に「死亡診断書」の作成を依頼しましょう。
引用:法務省「死亡届」
病院で亡くなった場合は、死亡が確認されたらすぐに死亡診断書が発行されますが、自宅など病院以外で亡くなった場合は、検視や検死が必要な場合もあります。検視や検死によって死因が特定され、死亡診断書と同様の効力をもつ「死体検案書」が発行されることを待ちましょう。
死亡診断書や死体検案書は「死亡届」の提出に必要です。その後の手続きに提出を求められることも珍しくないため、念のためコピーを複数とっておきましょう。
1-2.死亡届と埋火葬許可申請
身内の誰かが死亡した場合、亡くなったことを知った日から7日以内に、死亡診断書か死体検案書を添えて死亡届を提出することが、戸籍法第86条で定められています。死亡診断書(死体検案書)の左側にある死亡届について、必要項目を記載し、期限内に提出しましょう。
戸籍法第87条によると、死亡届の提出は次のような方々に義務付けられています。故人の死亡場所や本籍地、届出人の住所地のうち、いずれかの市区町村役場が提出先です。誰が行うかを決め、死亡届を提出してください。
- ① 死亡した方と同居している親族や、その他の同居人
- ② 死亡した方の住居の家主や地主、家屋や土地の管理人
- ③ ①以外の親族や後見人・保佐人・補助人・任意後見人
死亡届の提出とあわせて、「埋火葬許可申請」の手続きも行いましょう。埋火葬許可証がなければ、遺体の火葬・埋葬ができません。
埋火葬許可申請の手続きの期日は、死亡届と同じですが、多くの場合、葬儀当日に火葬場に遺体を運んで火葬するため、葬儀前には必ず完了させておきましょう。
2.身内の死亡後なるべく早く行うべき手続き
身内の誰かが亡くなった場合、死亡診断書や死亡届・埋火葬許可申請といった手続きは葬儀の前に行う必要があります。これらの手続きが終わると、次に死亡後早めに行うべき手続きに取り掛かりましょう。
なるべく早めに行うべき手続きには、公的なものと私的なものがあります。やるべきことが多いため、手続きの内容やポイントをきちんと整理してから行いましょう。
2-1.公的手続きの一覧
葬儀が終わった後には、年金や健康保険、戸籍の届け出など、遺族が行うべきことは多数あります。主な手続きや期日について、次の表を参考に確認しておきましょう。
遺族が行う公的手続き / 国民年金や厚生年金保険の資格喪失届け出 | |
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期日 | 備考 |
国民年金:14日以内 厚生年金保険:5日以内 | 国民年金または厚生年金保険の保険料を納めている方が亡くなった場合(国民健康保険以外の健康保険組合に入っていた方は、保険証も返納) |
遺族が行う公的手続き / 年金受給権者死亡届 | |
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期日 | 備考 |
国民年金:14日以内 厚生年金:10日以内 | 年金受給者が亡くなった場合、年金受給停止の届け出を行う |
遺族が行う公的手続き / 住民票の抹消届 | |
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期日 | 備考 |
14日以内 | 死亡届と同時に住民票が抹消されない場合に提出 戸籍の除票もあわせて発行してもらうとよい |
遺族が行う公的手続き / 世帯主の変更届 | |
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期日 | 備考 |
14日以内 | 亡くなった方が世帯主の場合に、住民異動届を提出 |
遺族が行う公的手続き / 国民健康保険資格喪失届(国民健康保険証を返納) | |
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期日 | 備考 |
14日以内 | 亡くなった方が国民健康保険加入者だった場合 |
遺族が行う公的手続き / 介護保険資格喪失届(介護保険証の返納) | |
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期日 | 備考 |
14日以内 | 亡くなった方が介護保険の被保険者であった場合、資格喪失届出を行う |
遺族が行う公的手続き / 雇用保険受給資格者証の返還 | |
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期日 | 備考 |
1か月以内 | 亡くなった方が雇用保険を受給していた場合 |
遺族が行う公的手続き / 所得税準確定申告と納税 | |
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期日 | 備考 |
4か月以内 | 亡くなった方が自営業者、または年収2,000万円以上など、確定申告を必要とする方の場合 |
遺族が行う公的手続き / 相続税申告と納税 | |
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期日 | 備考 |
10か月以内(相続人全員と協議する必要があるため早めに取り掛かる) | 相続した財産が基礎控除額以上だった場合、相続税額を計算した上で税申告し、納税する |
遺族が行う公的手続き / 国民年金の死亡一時金の請求 | |
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期日 | 備考 |
2年以内 | 国民年金の第1号被保険者として、36か月以上、国民年金保険料を納めていたものの、年金を受け取ることなく亡くなった場合 |
遺族が行う公的手続き / 埋葬料などの請求 | |
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期日 | 備考 |
2年以内 |
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遺族が行う公的手続き / 高額療養費の申請 | |
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期日 | 備考 |
医療費の支払いから2年以内 | 70歳未満で、自己負担した医療費が高額である場合 |
遺族が行う公的手続き / 遺族年金の請求 | |
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期日 | 備考 |
5年以内 | 亡くなった方が主に生計を担っていた扶養者であり、妻・子・孫・55歳以上の夫・父母・祖父母がいる場合に支給される |
詳細な条件や本人確認書類・戸籍謄本・印鑑などの必要書類・物品などは、届け出先・申請先にきちんと確認してから手続きを行うことをおすすめします。また、相続関係は話し合いや相続人調査が必要な場合もあり、相続発生から相続開始まで時間がかかる場合もあるため、早めに取り掛かりましょう。
2-2.相続手続きや名義変更手続きの一覧
戸籍関係や社会保険、税金などの公的な手続きのほかにも、遺産相続や各種契約の解約・名義変更、民間保険の手続きなど、様々な手続きがあります。主なものを確認しましょう。
遺族が行う手続き / 遺言書の検認 | |
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期日 | 備考 |
相続税の申告(10か月以内)に間に合うように | 遺言書が公正証書に該当しない場合 |
遺族が行う手続き / 相続放棄 | |
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期日 | 備考 |
3か月以内 | 相続人が法定相続分を含む相続財産のすべてを放棄する場合、相続人自身で放棄申請する |
遺族が行う手続き / 死亡保険金(生命保険)の請求 | |
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期日 | 備考 |
2年以内 | 民間の生命保険会社の生命保険(死亡保険があるもの)加入者だった場合、保険金請求を行う |
遺族が行う手続き / 相続した財産の名義変更 | |
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期日 | 備考 |
相続確定後、速やかに | 預貯金の銀行口座、株式、不動産など、財産の中で亡くなった方が預金者・名義人となっているものについて、金融機関の口座の名義変更や、相続不動産の登記変更を行う |
遺族が行う手続き / 自動車所有権の移行 | |
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期日 | 備考 |
相続確定後15日以内 | 亡くなった方が所有者だった自動車を相続した場合 |
遺族が行う手続き / クレジットカードの解約 | |
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期日 | 備考 |
相続確定後、速やかに | 複数枚所持している場合、各クレジットカード会社に連絡して解約 |
遺族が行う手続き / 公共料金の名義変更・解約 | |
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期日 | 備考 |
亡くなった後、速やかに | 故人が契約者で、引き続き使用する場合は名義変更し、今後使用しない場合は解約する |
遺族が行う手続き / 電話の名義変更・解約 | |
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期日 | 備考 |
亡くなった後、速やかに | 故人が契約者で、引き続き使用する場合は名義変更し、今後使用しない場合は解約する |
遺族が行う手続き / 運転免許証の返納 | |
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期日 | 備考 |
亡くなった後、速やかに | 警察署または運転免許センターに返納する |
遺族が行う手続き / 旅券(パスポート)の返納・失効手続き | |
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期日 | 備考 |
亡くなった後、速やかに | パスポートの持ち主が亡くなったことが分かる書類とともに、都道府県の申請窓口に返納し、失効手続きを行う |
上記のほかに、亡くなった方が契約していたサービスなどがあれば、順次手続きを行いましょう。
3.葬儀の手続きは死亡届などと並行して行う
身内の誰かが亡くなった場合には、死亡届の提出など死亡直後に行うべき手続きと並行して、通夜や葬儀・初七日法要などの手配も行う必要があります。死亡診断書や死体検案書を受け取ったら、死亡届の提出や埋火葬許可申請と同じタイミングで葬儀社に連絡しましょう。
遺体の搬送や安置を行いながら、通夜や葬儀に関する打ち合わせを行います。最近では亡くなった7日後に行われる初七日法要を、葬儀の日の火葬後に行うことも多いため、初七日法要の内容もあわせて検討しましょう。
■打ち合わせの主な内容
- 葬儀場や火葬場、僧侶など宗教者との日程調整
- 葬儀内容(スケジュール確認や祭壇や供物・供花、香典返し、通夜振舞いなど)の決定
家族の誰かが亡くなってから、通夜・葬儀・初七日法要までは、遺族が行うべきことも多く、葬儀内容の検討に多くの時間をかけることは難しいでしょう。深い悲しみの中で迅速に物事を決めるためには、信頼できるプロに相談することが大切です。まずは地域で信頼できる葬儀社をインターネットなどで探し、電話などで相談してみましょう。
まとめ
身内の誰かが亡くなった場合、遺された家族は、死亡診断書の受取や死亡届の提出、埋火葬許可申請などといった手続きを、直ちに行わなければなりません。
年金や健康保険、税金関連や、相続関連など、一定の猶予はあるものの、葬儀後速やかに取り掛かる必要がある手続きもあります。やるべきことをリストアップし、漏れのないよう順番に行ってください。
葬儀の手配(葬儀社への連絡)は、死亡届の提出と同時期に行う必要があります。家族を亡くした直後ではありますが、信頼できる葬儀社と相談しながら、最期のお見送りの準備を行いましょう。