仏壇の適切な配置とは?注意するべき3つのポイントも

2021年11月24日 葬儀後
仏壇の適切な配置とは?注意するべき3つのポイントも

引越しを予定している人や初めて仏壇を購入した人の中には、仏壇を置くべき場所や方角に頭を悩ませている人もいるでしょう。昔ながらの日本家屋には仏間が設けられているため、どこに置けばよいか迷うことはありませんでした。しかし、現代はマンションを選ぶ人や洋風の間取りを好む人が多く、仏間のない住宅も増えています。

そこで今回は、仏壇の基本的な飾り方や適切な設置場所、配置時に注意すべきポイントを解説します。仏壇を正しく飾り、仏様やご先祖様に手を合わせましょう。

1.仏壇の基本的な飾り方

まずは、基本的な仏壇の飾り方を把握しましょう。下記は、一般住宅で使用されることの多い小型仏壇(上置仏壇)へ仏具を飾る際の手順です。

1 中央にご本尊を祀る
仏壇の最上段中央にご本尊、両側に祖師像(祖師名号)をお祀りします。ご本尊および祖師像が掛け軸状の場合は、奥の壁に掛けましょう。
2 位牌を安置する
位牌はご本尊の左右、もしくは1段下に安置します。仏壇の正面から見てご本尊にかぶらない場所に安置することが大切です。複数の位牌を安置する場合は、上座になる向かって右側から年功序列順に置きましょう。
3 仏器膳・仏飯器・茶湯器・高杯(高月)を配置する
位牌の1段下の中央に仏器膳を配置し、仏器膳の上の左側に仏飯器、右側に茶湯器を置きます。高杯は仏器膳の両隣に配置しましょう。高杯は小皿でも代用することが可能です。
4 三具足などを配置する
仏壇の最下段中央に香炉を配置します。香炉が3本足の場合は、手前中央に脚1本がくるように置きましょう。その左側に花立、右側に燭台を並べます。リン・線香差し・火消しなども同じ段の手前側に置くのが一般的です。

宗派によって小物の並べ方が変化することもありますが、基本の配置を押さえておけば問題ありません。

2.仏壇の適切な配置とは?

仏教では、基本的に仏様がいない方角はないと考えられています。そのため、「必ず仏壇を向けなければならない方角」はありません。とはいえ、より適切とされる方角は数種類あり、さらに宗派によって教えは異なります。したがって、自分自身が納得できる説や、信仰する宗派が推奨する方角を採用するとよいでしょう。ここからは、仏壇の適切な配置について解説します。

2-1.仏壇の向きに関する4つの説

仏壇の向きは、一般的に下記の4説に沿って決めます。

●南面北座説

南面北座説では、仏壇の正面を南向きに配置します。古代中国において、高貴な身分の人が北を背にして座っていたことが由来です。また、仏壇を南向きに置くと直射日光が当たらず風通しもよいため、仏壇が傷みにくい点でも推奨されています。

●西方浄土説

西方浄土説では、仏壇の正面を東向きで配置します。仏教における理想世界であり、阿弥陀如来や故人が暮らす極楽浄土がある西向きに拝むことを最適とする方角です。また、インドにおいて日が昇る東は立身出世につながるとされ、家の主人が縁起を担いで東向きに座る風習に倣ったとも言われています。

●本山中心説

本山中心説では、仏壇を拝む際に各宗派の総本山も同時に拝める場所に配置します。信仰する宗派や居住場所、部屋の間取りによって仏壇の位置や向きが異なるため、特定の方角は決まっていません。

●春夏秋冬説

春夏秋冬説は、ご先祖様や故人が安らかに眠れるのなら、仏壇の置き場所にこだわらなくても供養できるという説です。「万物が芽生える春=日が昇る東」「実が熟する夏=陽光が燦々と降り注ぐ南」「収穫を迎える秋=日が沈む西」「万物を収める冬=陽光が遮られる北」と例えられます。どの季節にも意味があるように、方角によって優劣は付けられないとする考え方です。

2-2.宗派ごとによる向きの違い

宗派によっても適切とされる仏壇の向きは異なります。下記は、主な宗派で推奨される仏壇の配置です。

●浄土真宗・浄土宗・天台宗

浄土真宗・浄土宗・天台宗では、東向きとなる西方浄土説の配置を推奨しています。3つの宗派で信仰する阿弥陀如来は西の極楽浄土にいるため、仏壇の背を西に向けることで故人と仏様を同時に拝めるとされています。

●真言宗

真言宗では、総本山である和歌山県高野山の金剛峰寺に向かって拝む、本山中心説の配置を推奨しています。そのため、仏壇を配置する部屋と総本山の位置関係を計算し、仏壇の向きを決める必要があります。

●曹洞宗・臨済宗

曹洞宗・臨済宗では、南向きとなる南面北座説の配置を推奨しています。中国からの伝来や利便性以外に、仏教の開祖であるお釈迦様が南向きで説法を行っていたことも理由の1つです。

2-3.適した設置場所

仏壇を置くときは、仏様の向き以外に設置場所にも気を付けなければなりません。下記は、仏壇を設置する際に適している場所の一例です。

  • 仏間
  • 床の間
  • 客間
  • 茶の間
  • リビング

上記の中で仏壇の設置に最も適した場所は、仏壇のために設えられた仏間です。仏間がない場合は、部屋の中でも上座に該当し、日の当たり具合や風通しが良好な床の間がよいでしょう。客間や茶の間などの和室は仏壇との調和性が高く、「毎日手を合わせやすい」「法事の際に人が集まりやすい」という利便性も兼ね備えた設置場所です。

「ご先祖様や故人が常に家族を見守ってくれている」という安心感を得られる点では、リビングも適しています。リビングに仏壇を設置する場合は、洋室でも違和感が少ないデザイン・素材を使用したタイプ、スペースがなくてもお参りしやすいコンパクトサイズが人気です。

3.仏壇の配置時に注意するべきポイント3つ

仏壇を配置する際は、さまざまな注意点があります。注意を怠ったまま配置を終えてしまうと、仏壇の買い替えや配置換えが必要になる可能性があるため、仏壇の美観を維持し、正しい作法で手を合わせられる場所を考えましょう。最後に、仏壇の配置時に注意すべきポイントを3つ紹介します。

3-1.直射日光と湿気を避ける

仏壇は、直射日光を浴び続けると木材や塗料が日焼けで変色したり、乾燥が進んで木材のひび割れが起こったりする恐れがあります。そのため、できるだけ直射日光の当たらない日陰に置きましょう。熱を持ちやすい電化製品の近く、振動が起こりやすいオーディオ機器の上、冷暖房の風が直接当たる場所も避けるほうが無難です。

木製の仏壇は比較的湿気に強いものの、過度の湿気は歪みやカビの繁殖を招き、お供え物も傷みやすくなってしまいます。仏壇・位牌・仏具に使用されている漆塗りや金属は特に水気に弱いため、水回りの近くには置かないようにしましょう。

3-2.神棚との位置関係を考慮する

仏壇と神棚を同じ部屋に配置する場合、片方をお参りする際にもう片方へお尻を向ける格好とならないよう、仏壇と神棚を向かい合わせにすることは避けるほうがよいとされています。

また、仏壇と神棚を同じ方角へ配置する場合は、神棚の真下とならないように仏壇をずらして配置します。どちらへ手を合わせているか明確になるだけでなく、神棚と仏壇に上下関係を作らず、神棚を拝む際に仏壇を見下ろすことも避けられるためです。

このように、仏壇と神棚の配置は「どちらにも失礼がないようにする」「上下関係を作らない」ことを意識することが大切です。とはいえ、自宅の広さや間取りの都合で適切な配置が困難な場合は、お参りのしやすさを重視しても問題はありません。

3-3.ご本尊の高さに気を付ける

仏壇を拝む際に見下ろす姿勢とならないよう、お参りした際の目線より上になる位置にご本尊を置くとよいでしょう。

仏壇の背が低い場合は、机や台を使用して高さを調節します。立ったままお参りする場合には、棚の上に仏壇を置くなど、ご本尊を見下ろさずに済むよう工夫することが大切です。また、背の高い仏壇の場合でも、床より高い位置に配置することで、敬意を表すことが可能です。

まとめ

仏教の教えでは「どの方角にも仏様がいる」と考えられているため、仏壇の配置に絶対的なルールはありません。しかし、宗派の考え方によっては最適とする仏壇の向きが異なるケースがあります。自分の信仰する宗派がどの向きを推奨しているのか確認した上で、直射日光や湿気の多い部屋は避け、住宅環境に合った設置場所を決めることが大切です。

仏壇の飾り方は、基本を押さえれば問題ありません。飾り方や置き方に不安がある場合は、菩提寺や仏具店へ質問することをおすすめします。