命日とは?一般的な過ごし方から適したお供え物まで
どの宗教でも、故人の命日は重要な意味を持っています。仏教では故人の命日を特別な日として扱い、一周忌や三周忌などの節目に法要を執り行って手厚く供養する習わしがあります。
大人になると法要に参加する機会が増えるものの、命日の意味や過ごし方、お供え物に関して詳しく把握できていない人もいるでしょう。
今回は、命日の概要や一般的な過ごし方を解説します。命日に適したお供え物・適さないお供え物も解説するため、ぜひ参考にしてください。
1.命日とは?
命日とは、故人が亡くなった「没年月日」のことです。翌年以降の同月同日を「祥月命日」と呼び、遺族や関係者が一堂に会して故人を弔い偲ぶ習わしがあります。例えば、故人が2020年10月10日に亡くなった場合、2021年以降の毎年10月10日が祥月命日となります。2月29日に亡くなった場合、うるう年以外の年は2月28日を命日として扱うケースがほとんどです。
日本の仏教では一周忌・三回忌・七回忌など、特定の年数が経過した祥月命日に年忌法要が営まれます。年忌法要では、親族や関係者を招いて読経や会食に参加してもらいますが、没年から年数を重ねるごとに少しずつ規模を縮小する傾向にあります。年忌法要以外の祥月命日では、身内だけでお墓参りや供物を供えるなどして過ごす場合が一般的です。
1-1.月命日との違い
月命日とは、故人が亡くなった「日」のことです。故人が10日に亡くなった場合、毎月10日が月命日に該当します。ただし、月命日と祥月命日は重複しないため、月命日は毎年祥月命日を除いた月ごとに計11回訪れることになります。また、31日が命日の場合、11月などの月命日は30日に前倒しして数えるケースが一般的です。
月命日に大々的な法要を行う家庭は少なく、ほとんどの場合は身内だけで故人の思い出を偲びます。とはいえ、故人と親しかった人にとっては1つの区切りとなる日でもあるため、普段より丁寧にお墓や仏壇を掃除したり、お供え物を奮発したりして過ごす傾向です。
2.一般的な命日の過ごし方
命日にはさまざまな過ごし方があります。故人との関係性によって過ごし方が変わることもあれば、信仰する宗派の慣習によって、法要や儀式が定められているケースもあるでしょう。しかし、故人を偲ぶ気持ちで丁寧に供養をすることは、どの宗派でも変わりません。
ここでは、一般的な命日の過ごし方を解説します。
2-1.お墓参りをする
故人の祥月命日には、遺族や親族などの親しくしていた人がそろってお墓参りをすることが理想的です。命日が平日にあたる場合や、遠方に暮らしていて当日のお参りが困難な場合は、日付が多少前後しても問題ありません。お墓参りの当日は周囲を掃除して墓石を磨き、お花やお菓子などをお供えします。
月命日の場合は、仏壇へのお参りだけでも十分です。普段より丁寧に仏壇を掃除して、故人が好んでいたお菓子などをお供えしましょう。どちらの命日も、故人の冥福を祈る気持ちが大切です。
2-2.法要を実施する
一定期間が経過した祥月命日に、故人の冥福を祈って年忌法要や追善法要を執り行うケースが一般的です。法要ではお寺や斎場などに親族・関係者を招いて、僧侶にお経を上げてもらい、会食をしながら故人を悼みます。
【法要が行われる主な時期】
- 初七日:命日から7日目
- 三十五日:命日から35日目
- 四十九日:命日から49日目
- 一周忌:故人が亡くなった翌年の祥月命日
- 三回忌:命日から2年後の祥月命日
- 七回忌:命日から6年後の祥月命日
- 十三回忌:命日から12年後の祥月命日
- 十七回忌:命日から16年後の祥月命日
- 三十三回忌:命日から32年後の祥月命日
- 五十回忌:命日から49年後の祥月命日
何回忌までという決まりはないものの、回数を重ねるごとに参列者を減らして身内のみで済ませることが多い傾向です。宗派にもよりますが、ほとんどの場合で三十三回忌や五十回忌を区切りとし、弔い上げを行います。
2-3.塔婆供養をする
浄土真宗以外の宗派では、卒塔婆を立てることも故人の供養となります。板塔婆に戒名や回忌などを彫り、墓石の後ろに設けられた塔婆立てに収めることが一般的です。関西などでは水に流して供養する経木塔婆を用いる場合もあります。宗派や地域によって取扱いが異なるため、事前に菩提寺へ確認しましょう。
塔婆供養を行う時期に明確な決まりはありません。しかし、塔婆の用意には手間と時間がかかります。法要に合わせて塔婆供養をする場合は、早めに連絡しましょう。
3.命日に適したお供え物とは?
多くの場合、命日には仏前へお供え物をしますが、お供え物として適していないものやマナーとして避けるべきものも少なくありません。お供え物を選ぶ際は自身の好みではなく、命日に適したものを用意することがポイントです。
ここでは、命日に適したお供え物を紹介します。
3-1.【お花】白菊・胡蝶蘭・カーネーション
一般的に四十九日の法要が終わる前は香りが弱く、色合いの淡白な花がふさわしいとされます。身内が供える場合は四十九日以降、身内以外は三回忌以降であれば鮮やかな花を選んでも失礼にあたりません。
- 白菊
菊は日持ちがよいこともあり、仏花の定番です。白菊には「高尚」「高潔」といった花言葉に加えて、「邪気を払う」「冥福を祈る」などの意味も持つことでお供え物にふさわしいとされます。 - 胡蝶蘭
胡蝶蘭は花粉で汚れにくく、鉢植えなら世話も簡単なことで人気が高い花です。四十九日前であれば白を選びましょう。 - カーネーション
カーネーションが母の日に贈る花の定番となったのは、亡き母に捧げた白いカーネーションが由来とされます。そのため、カーネーションは亡母への供花としても人気の高い花です。
お供えするお花選びに絶対的なルールはありませんが、毒のある花は避けたほうがよいでしょう。バラのようにトゲがある花の場合、トゲを処理すれば問題ありません。
3-2.【食べ物】菓子折り・果物・故人の好物
命日のお供え物は、基本的に菓子折りや果物、故人の好物を中心に供えることが一般的です。とはいえ、お供え後は家族がお下がりをいただく習慣があることも考慮しなければなりません。
よその家に贈る場合は、賞味期限が長い焼き菓子や、縁起がよいとされる丸い果物がおすすめです。お供え物を振る舞う風習がある地域の場合は、個包装タイプの品を多めに送る、縁切りを避ける意味合いで奇数個入ったものを選ぶなどの心遣いがあると喜ばれます。自宅でお供えする場合は、自分たちで食べ切れる量を用意すれば問題ありません。
4.命日に適していないお供え物
お供え物は故人の好みに合わせることが基本ではあるものの、下記の3種類は命日の供物として適していないため、注意が必要です。
- 肉、魚
仏教では、本来殺生を禁じています。日本の仏教は非常に戒律が緩やかではあるものの、命日のお供え物としては推奨できません。また、故人が好んでいた場合はお酒を供えることもありますが、遺族で飲み切れる場合のみにしましょう。基本的には避けたほうが無難です。 - 大きすぎるもの
お供えする場所に困るような大きすぎるものも、避けたほうがよいでしょう。また、お供え物は後々遺族側で分けるため、重く持ち運びづらいものは迷惑になる可能性があります。 - 日持ちしないもの
命日のお供え物は、すぐに食べられるとは限りません。お下がりをいただくときになって賞味期限が切れていたり腐っていたりする恐れがないよう、日持ちするものを選びましょう。
自宅でお供えする場合は家族の意志や考え方を優先しても問題ありません。しかし、他家へお供えする場合は可能な限りマナーを守ることが大切です。
まとめ
故人が亡くなった日である命日には、同月同日を指す祥月命日と、同日のみを指す月命日があります。どちらも故人を弔い偲ぶ点は共通し、特定の祥月命日には年忌法要を営むケースが一般的です。
年を重ねるごとに法要への参加者は絞られるようになるものの、お墓や仏壇に供え物をして故人の冥福を祈る日に変わりはありません。マナー違反とされる供物は避けつつ、故人が好んでいたものを中心にお供えし、親しい人とともに懐かしい思い出を語り合うとよいでしょう。