位牌はいつ処分する?2つの方法から注意点まで

2021年10月18日 葬儀後
位牌はいつ処分する?2つの方法から注意点まで

位牌を処分する機会はあまりないものの、生活の変化などに伴って手放す必要性が生じる場合があります。多くの位牌は木製品であるため、家庭ごみとして捨てることが可能です。しかし、少しでも故人に対する思いや気にかかることがある場合は、きちんとしたルールや形式に基づいて処分しましょう。

今回は、位牌を処分することが多いタイミングや処分方法、処分時に注意するべき点を解説します。位牌の処分に関してよくある疑問にも回答するため、位牌の処分をトラブルなく済ませたい人はぜひ参考にしてください。

1.位牌を処分するタイミングとは?

位牌は、親族や先祖の魂が宿る「依り代」として大切に守られて受け継がれてきたこともあり、処分する機会は決して多くありません。しかし、家の事情やタイミングによっては位牌の処分を検討するケースもあります。

ここでは、一般的に位牌が処分されるタイミングを紹介します。

1-1.引越し

引越し先の自宅に仏壇を置くスペースがない場合、仏壇だけを処分して、位牌は一緒に持っていくケースが一般的です。しかし、仏壇を処分すると同時にお墓の在り方や供養の仕方を見直す機会となり、位牌の処分に踏み切る人は珍しくありません。

遠方に引越して菩提寺と疎遠になる場合も、離檀してお墓を閉じるだけでなく仏壇や位牌もまとめて処分するケースがあります。また、位牌の持ち主が故人となった場合、引き取り手がいない・宗派が違うとなれば処分せざるを得ません。

1-2.弔い上げ

葬儀の後は一周忌や三回忌など、所定の年数で年忌法要が営まれます。弔い上げとは、故人ごとに行っていた年忌法要を終了し、ご先祖様と合祀して供養・法要を行うことです。以降はご先祖様と同じ位牌でお祀りするため、弔い上げに伴って個別の位牌は処分します。

弔い上げをどの時期に行うかは各家や宗派によって判断が分かれるものの、一般的に三十三回忌もしくは五十回忌を区切りとする傾向です。

1-3.位牌の作り替え

長くお祀りしていた・災害に遭遇したなどの理由で、位牌が傷んだり汚れたりしたために新しく位牌を作り替える場合、古い位牌は処分しなければなりません。また、四十九日法要を終えた際に白木位牌から本位牌に変更する場合も、白木位牌の処分が必要となります。

宗派の変更や戒名・位号替えを行った際に位牌を作り替える場合も、古い位牌の処分が必要です。

2.位牌を処分する2つの方法

故人への愛情や深い信仰心が込められている位牌を処分する際は、関わってきた人への敬意と礼節を持って行わなければなりません。トラブルの火種を残さないためにも、位牌の処分は適切な方法を把握したうえで実施することが重要です。

ここでは、位牌の処分方法を2つ紹介します。

2-1.お焚き上げ

位牌を処分する方法の1つが、お焚き上げです。お焚き上げは、位牌に神社の御祈祷やお寺の読経を捧げた後、焼却処分してもらう儀式を指します。神道と仏教で多少解釈が異なるものの、「魂が宿ったものや思い入れが強いものを炎で浄化し処分する」という意味合いでは同じです。

処分品が位牌の場合、お焚き上げを行う前に「魂抜き」の儀式も必要となります。魂抜きとは、位牌に入れられた故人の魂を抜くことで「お祀りする対象」から「ただの物品」に格下げする儀式です。「閉眼供養」「お性根抜き」「遷仏法要」などとも呼ばれます。

ただし、位牌は必ず魂抜きが必要となるわけではありません。宗派によってはそもそも位牌に「魂入れ」を行っていないケースもあり、魂が入っていないのであれば抜く必要がないためです。位牌をお焚き上げする場合は、位牌を作った際に「魂入れ」を行ったかどうかを確認しましょう。

「魂抜き」を怠ったとしても、法に触れることはありません。しかし、位牌に関わる人の中に儀式の有無を気にする人がいる場合は、処分時の手順に含めたほうがよいでしょう。

2-2.永代供養

永代供養という形で位牌を処分する方法もあります。永代供養とは、寺院や霊園に位牌を納めることで、位牌の維持・管理や供養を代行してもらう方法です。ただし、「永代」は「永遠」ではありません。お寺によって期間は異なるものの、契約時期が過ぎれば自動的にお焚き上げによる処分が行われます。

位牌だけでなく遺骨も含めて永代供養とし、三十三回忌や五十回忌などキリのよいところで合祀されることが一般的です。年忌法要やお墓参りを行わなくとも故人の供養自体は続けてもらえるため、遠方に移住する人にも向いています。

なお、永代供養と似た言葉である「永代使用」は、お墓の土地を使用する権利のことです。多くの場合、永代使用料を支払ってお墓を建てれば、墓じまいを行うまで一族の人間が永久的にその土地を継承できます。

3.位牌の処分に関するよくある疑問

位牌を処分した経験がない人にとって、位牌の処分を実施するタイミングではさまざまな疑問を抱く場合もあるでしょう。位牌の処分をなるべくスムーズに進めるためには、処分先や費用といった項目について把握することが重要です。

ここでは、位牌の処分に関するよくある疑問2つと、その回答を紹介します。

3-1.処分はどこに依頼する?

位牌を処分する際は、下記の依頼先が候補として挙げられます。

  • ●お寺
  • ●神社
  • ●霊園
  • ●葬儀社
  • ●仏具店
  • ●遺品整理業者

基本的にお寺であれば、魂抜きからお焚き上げまで一括で行うことがほとんどです。お墓の管理や年忌法要を依頼している菩提寺があれば、そちらへ依頼しましょう。

ただし、宗派によってはお焚き上げのみで魂抜きを行っていない場合もあります。葬儀社や仏具店でも位牌の処分は可能であるものの、魂抜きを行っていないお店も多く、事前の確認が必要です。

遺品整理業者の場合、魂抜きも行ってくれるケースは少なくありません。とはいえ、業者によって対応がバラバラなため、事前調査を行い相見積もりを取るなど業者の質を確認しましょう。「遺品整理士」が所属し、「供養証明書」を発行する業者であればより安心です。

3-2.処分にかかる費用は?

位牌の処分費用は依頼先や魂抜きを行うかによって異なるものの、料金相場は1柱ごとに10,000~30,000円が目安です。業者に依頼する場合は、はじめから料金が提示されるため、納得のいくプランを選択するとよいでしょう。

お寺や神社に依頼する場合は、料金ではなく「お布施」として納めます。お坊さんをお招きする場合は「お車料」も必要です。こちらは10,000~50,000円が相場とされるものの、不安な場合はお寺の事務に伺いを立てましょう。

永代供養を依頼する場合の目安は、1柱ごとで30,000円以上です。契約期間やお墓も合祀するかなど、サービス内容によっては数十~数百万円かかる場合もあります。

4.位牌の処分時に注意するべきこと

依頼先さえ見付けてしまえば、位牌の処分は簡単です。しかし、位牌は一度処分してしまえば取り返しがつかないものであるため、以下の点に注意しなければなりません。

〇近親者や親族に相談する

位牌は仏壇に祀っている継承者の持ちものではありますが、同時に家族・親族の思い入れが強いものでもあり、一定の配慮が必要です。信心深い人にとって、位牌の処分は「許しがたい暴挙」ととられる可能性も否めません。

トラブルを避けるためには自分の判断だけで行動せず、親戚縁者へ丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。

〇浄土真宗の場合は事情が異なる

同じ仏教の括りではあるものの、浄土真宗においては「故人の魂は位牌に宿らない」との教えを持っています。そのため、浄土真宗の位牌には「魂入れ」が行われておらず、また「魂抜き」の儀式も行われません。しかし、お寺によっては位牌の供養に応じてもらえる場合もあるため、相談するとよいでしょう。

まとめ

位牌を処分する機会は滅多にないものの、引越しや弔い上げをきっかけに仏壇とともに処分することや、作り替えに伴って古い位牌を処分することがあります。位牌を処分する場合は神社やお寺などでお焚き上げしてもらうか、お寺や霊園で永代供養をお願いすることが一般的です。

他にも、葬儀社や仏具店、遺品整理業者などに依頼して処分ができます。ただし、後のトラブルを避けるためにも、必ず近親者や親族と話し合い、位牌の関係者全員から了承を得ておきましょう。