数珠の意味や起源は?男性・女性別の正しい選び方を解説
葬儀や法事、お墓参りの際に持参する数珠は、身近な仏具でありながらその意味や起源はあまり知られていません。また、「数珠が必要となったが、どのような種類のものを買うべきかわからない」「葬儀における正しい数珠の持ち方がわからない」などの悩みを持つ方もいるでしょう。
この記事では、数珠の意味・起源・種類などの基本情報から、男女別の数珠の選び方、数珠の持ち方などのマナーまでを解説します。ぜひ、数珠について正しい知識を身につけ、役立ててください。
1.数珠の意味とは?起源についても解説
数珠は、天然石や木を加工した玉(ビーズ)に紐を通して輪にした仏具であり、念珠(ねんじゅ)とも呼ばれます。
数珠の起源は、玉を使ってお祈りの回数を数える古代インドのヒンドゥー教徒の習慣です。ヒンドゥー教徒の習慣が仏教に伝わり、日本でも仏教の教えとともに数珠を使う習慣が伝来しました。
仏教が一般化するまでの間、数珠は高級品であったため、僧侶や貴族など一部の人しか持つことができませんでした。しかし、念仏が庶民の間に広がるにつれ数珠の普及が進み、仏事に欠かせない身近な道具となりました。
最近では、仏具として特別なシーンで利用するだけでなく、パワーストーンを使った数珠をお守りとしてブレスレットのように身につける方も見られます。
1-1.数珠の種類
ここでは、数珠の種類を「本式数珠」と「略式数珠」に分けて紹介します。
〇本式数珠
「本式数珠」は数珠の本来の目的である「念仏を唱えた数を数える」用途のためにつくられた正式な数珠です。玉の数は人間の煩悩の数と言われる108個となっており、輪を二重にして使うため、「本連数珠」「二連数珠」「二輪数珠」と呼ばれることもあります。
ただし、宗派によって形状が決まっており、玉の数が異なることもあるため注意が必要です。
〇略式数珠
「略式数珠」は本式数珠を簡略化した数珠であり、「片手数珠」とも呼ばれます。かつては本式数珠の玉の数である108の2分の1の54個・3分の1の36個などと決まっていましたが、現代では実用性が重視され、玉の数は決まっていません。
また、葬儀や法事では略式数珠の使用が一般的です。ただし、地域・家系・宗派によっては本式数珠が必要となるケースもあるため、あらかじめ確認しておくことがおすすめです。なお、ブレスレット型の数珠(腕輪念珠)は、お守りとしての用途が中心であるため、仏事における使用は避けましょう。
2.【男女別】数珠の選び方
自身が特定の宗派の信徒である場合、その宗派の本式数珠を持つことが理想的です。しかし、近年は、略式数珠を購入する方も増えています。なお、特定の宗派を信仰していない場合、数珠は自由に選んでかまいません。実物を見て、気に入ったものを選ぶとよいでしょう。
ただし、数珠には男性用・女性用のものがあるため、玉のサイズや色が異なるため購入の際は間違わないように注意が必要です。ここでは、男女別の略式数珠の違いと、それぞれの選び方を解説します。これから数珠を購入する方はぜひ参考にしてください。
2-1.男性の場合:玉のサイズは22玉・20玉・18玉が基本
男性用の略式数珠は、玉のサイズが比較的大きく、落ち着いた色味が中心となります。玉数は、22玉・20玉・18玉の3種類が一般的で、1玉のサイズは10~18ミリ程度です。数珠の輪の長さは全て28~29センチ程度であるため、玉数が少ないほど1つの玉のサイズは大きくなります。
22玉が一般的ですが、手の大きいきい方や貫禄を出したい方は20玉や18玉を選ぶとよいでしょう。
素材は天然石から木までさまざまな種類から選ぶことができ、中でも黒や茶色系の落ち着いた色味の「縞黒檀(しまこくたん)」「瑪瑙(めのう)」などが人気です。房の色に決まりはないため、玉の色に合わせた落ち着いた色を選ぶとよいでしょう。
2-2.女性の場合:玉のサイズは6ミリ・7ミリ・8ミリが基本
女性用の略式数珠は、男性用の略式術と比べると玉のサイズが小さく、明るい色味のものが多い傾向です。玉数は22玉・20玉・18玉が基本であり、輪の大きさは25~26センチ程度となります。玉サイズは6ミリ・7ミリ・8ミリが基本となり、7ミリが人気です。購入の際は、実際に持ってみて手に馴染むかどうか確認するとよいでしょう。
素材は、水晶などの天然石を選ぶ方が多く、淡いピンクの「紅水晶」「珊瑚」・紫色の「アメジスト」・淡い緑の「翡翠」なども人気です。無色透明の水晶の主玉と、有色の石を使った天玉を組み合わせたものも見られます。房の色に決まりはないため、好みの色を選ぶとよいでしょう。
3.数珠の正しい持ち方
葬儀や法事に数珠を持参したものの、「持ち方がわからない」「数珠を片手にかけている人もいれば、両手にかけている人もいて混乱する」など、焦る方は少なくありません。あらかじめ、数珠の持ち方や使い方を把握しておきましょう。
なお、数珠の持ち方には宗派にかかわらず共通する部分もあれば、宗派や数珠の種類によって異なる部分もあるため、注意が必要です。ここでは、数珠の持ち方について、基本的な持ち方と3つの宗派の持ち方を解説します。
3-1.共通する基本的な持ち方
数珠の基本的な持ち方は、男女共通です。使用する場面によって細かな作法があるものの、「基本的には左手で房を下にして持つ」と覚えておきましょう。
以下では、葬儀や法事における数珠の持ち方を4つの場面に分けて解説します。
宗派の種類 | 数珠の持ち方 |
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数珠を使わないとき | 着席中、数珠を使わない場面では数珠を左手首にかけておきます。 |
合掌するとき | 合掌をする際は、手を合わせ親指と人差指の間に数珠をかけます。もしくは、親指と人差指の間に数珠をかけた左手に、右手を添えて合掌してもかまいません。いずれも、房が下となるようにしましょう。 |
移動するとき | 焼香などのために席を立ち移動する際は、房を下にして左手で持ちます。 |
焼香のとき | 焼香中は、左手親指と人差指の間に数珠をかけ、右手で焼香します。 |
なお、以上はあくまで一例であるため、事前に家族や関係者に作法を確認しておくことがおすすめです。
3-2.宗派別の持ち方
宗派によって、本式数珠の種類が異なるように、数珠の持ち方にも違いが見られます。ここでは「浄土真宗」「天台宗」「真言宗」の3つの例を挙げ、数珠の持ち方を解説します。
宗派の種類 | 数珠の持ち方 |
---|---|
浄土真宗 | 浄土真宗には男性用と女性用の数珠があり、さらに女性用は「西本願寺派」と「大谷派」にわかれています。
なお、浄土真宗では、念仏を唱える数を重視しないため、数珠は礼拝の道具として考えられています。 |
天台宗 | 天台宗では、平たい形の108の玉が連なる本式数珠が使われています。 合掌する際は、人差指と中指の間に数珠の両端をかけ、そのまま手を合わせます。房は下に垂れるようにしましょう。また、持つ際は、二重にして左手の親指と人差指のかけ握ります。このとき手の甲に房が垂れるようにしましょう。 |
真言宗 | 真言宗では、数珠が重視されており、玉や房などの部位にさまざまな意味が込められています。 合掌する際は、中指に数珠の両端をかけ、そのまま手のひらで数珠を挟んで、すり合わせるようにします。また、持つ際は二重にし左手の親指と人差指の間にかけます。このとき、親玉が親指側になるようにし、房を握り込みます。 |
以上の宗派以外にもさまざまな宗派があり、それぞれ数珠の扱いが異なります。法事などでは宗派に応じた数珠や作法が求められることもあるため、あらかじめ親族に確認しておきましょう。
4.数珠を使用するときの注意点2選
数珠を使用する際は、持ち方以外にも注意する点があります。ここでは、数珠を使用する際のマナーを2つ紹介します。
〇数珠の貸し借りはしない
突然の訃報が多いため、「数珠を持っていない」「どこにしまったか忘れた」と慌てる方は少なくないでしょう。しかし、家族や知人間での貸し借りは避けてください。数珠は「持ち主の念が込められたお守り」「仏様と持ち主をつなぐ仏具」と考えられており、人との共有は望ましくありません。
数珠がすぐに用意できない場合は、持たずに参列することもやむを得ないでしょう。必要なときに慌てないよう、自分専用の数珠を用意し、喪服とともにすぐに取り出せるところに保管しておくことが大切です。
〇椅子や畳の上に置かない
仏教において重要な意味を持つ数珠を、椅子や畳・床に直接置くことはマナー違反です。葬儀に行く際は手に持つか、バッグ・ふくさ・ポケットなどにしまって肌身はなさず持ち歩きましょう。また、購入時に携帯用の袋がついていることも多いため、数珠と一緒に持ち歩くことがおすすめです。
まとめ
古い伝統を持つ数珠は、本来念仏を数えるという役割がありましたが、現代では礼拝の道具としての意味合いが強まり、最も身近な仏具として親しまれています。数珠にはさまざまな種類があり、その中でも略式数珠と呼ばれる、輪の小さな数珠が一般的です。
略式数珠は男性用と女性用にわかれており、輪や玉の大きさや色味に違いがあります。また、数珠の持ち方は左手で房を下に垂らす形が基本です。その他に、使用する場面や、宗派によっても使い方が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。